祖父から継いだ小さな果樹園


2016年の春

わたしたちは祖父の果樹園を継ぐことにしました。淡路島、五色町鮎原。ゆるやかな緑のアプローチを経て、ひっそりと佇む長屋門。90歳になる祖父が一人で暮らす家。四季の果実が採れる小さな果樹園。わたしたちのこれから生きる場所が、ここにある気がしたのです。

果樹園を営みながら

改修した長屋門で、小さなパーラーもはじめました。パーラーでは季節の果実をつかったフレッシュジュースをお楽しみいただけます。それから加工品をつくったり、マーケットに出店したり、こどもが生まれたり、、、。いろんな仕事を抱えながら、やっぱり少し欲張りかなぁと迷ったりしますが、これがわたしたちの生き方なんだと思います。

名前は " 森果樹園×ツギキ " といいます。

「森果樹園」は果樹園の名前。「ツギキ」はぼくたちの屋号。
接ぎ木という果樹ならではの生き方が、僕たちのこれからの生き方に重なってみえたのです。
樹を接ぎ、手を繋ぎ、家を継ぐ、そんな明るい暮らしを、わたしたちは紡いでいきたいのです。

祖父から学び、自分たちで考える。

代々受け継がれてきた果樹園

果樹園は淡路島の小さな山の上にあり、天気のよい日は山の上からは瀬戸内海が見えます。南向きの砂地の斜面は水はけと日当りが良く、果樹がすくすく育つ土壌となっています。果樹園を囲む自然の樹々は、強い風から果樹園を守る役割を果たしています。果樹にとって最高のな立地が、何世代にもわたり受け継がれてきました。

祖父が70年かけてつくりあげた栽培方法

祖父が農業に携わる中で、鎌で草を刈って牛が田を耕す時代が過ぎ去りました。1年に1通りしか世話ができない果樹、気候も大きく変動する中、幾度とない挑戦と失敗を繰り返し、今の森果樹園の栽培方法が確立されています。それでも祖父は「わしもまだまだじゃ」と言います。

明日につなぐ

わたしたちにとっては、ここにある樹がすべてです。代々受け継がれ、祖父がずっと見続けてきた樹です。そのまま守り続けたいという思いもあれば、わたしたちの都合で栽培したいという強欲さもあります。しかし、度が過ぎる変化は果樹の生命を脅かしかねません。目の前にある樹が元気で健康に生き続けるよう、未来を見据えて、祖父から学び、明日の果樹園へと繋いでいきます。

“ Small is beautiful ”

家族で働くわたしたちにとって、果樹園は暮らしそのものです。

たわわに実った黄色い果実の下で春を迎え、ごはんを食べながら収穫の話をして、選別をしながらこどもの話をします。こどもは「すっぱ!」と言いながら何度も果実にかぶりつきわたしたちを笑わせ、選別を終えたみかんを元のカゴに戻してはしたり顔。

果実の喜びはどこから

果実のもたらす喜びは、果樹がもたらす喜びのほんの一部です。果樹との暮らしは、これまで知らなかったたくさんの喜びに満ちています。大きな果樹とともに暮らす私たちの小さなハッピーが、ここから旅立つひとつひとつ果実に宿るとわたしたちは信じています。

“ Small is beautiful ”

あるとき「小さな農家なので安定供給はできない」と口にしたとき、この言葉をいただきました。そのとき、わたしたちの小さな農家としての生き方が、すっと腑に落ちた気がしました。小さな農家にはできないことがたくさんあります。だけどわたしたちはこの言葉を支えに、大きな果樹と寄り添って暮らしていきたいと思います。

もりあきこ/経営・企画・窓口

妻。みかん農家で一級建築士。ツギキの経営・企画・窓口を担当。

もりちひろ/栽培・デザイン

夫。みかん農家でデザイナー。ツギキ代表。果樹の栽培、デザインを担当。

年表:準備中